新納私のD&I取組は人事部長に着任する前の、再保険部時代に考えたことがベースになっています。取引先の海外の再保険会社では、交渉の場に来る女性担当者がいたり、社長もいるなど、女性が当たり前に活躍する風土がありました。当社ももう一段やろうと、女性ライン長登用を上司として後押ししました。
人事部長時代に特に力を入れたのは、働き方改革、人財育成、女性活躍推進の3点。働き方改革では、シフト勤務や本社にサテライトオフィスを設置し、出張中でも業務ができるようにするなど柔軟な働き方を推進しました。長時間労働撲滅を目指して退社時間を19時とし、勤務時間延長申請書を人事部長である自分に提出させて1枚ずつ内容をチェックしたことも覚えています。
仕事と育児の両立の支援についても、企業主導型保育施設との利用契約など環境整備のほか、上司の意識変革として「育ボス宣言」をライン長以上に一気に拡大させ、職場内に掲示して皆で共有することも始めました。
また、女性活躍推進ではキャリアを拡げる機会作りを進めました。地域型社員の海外への短期留学制度は、従来の1年単位の留学制度では全域型男性社員が手を挙げることが多いけれど、期間を短縮すれば地域型社員や現場の社員も応募しやすくなると考えて作りました。大川さんも経験者ですよね。
ダイバーシティ推進の取り組み
取組状況
スペシャル座談会 〜新納社長と語る。あいおいニッセイ同和損保のD&Iの未来像〜
D&I推進のこれまでの取り組み
司会当社は、女性が活躍できる企業は今後もさらに成長するとの考えから、2008年に人事部内に「女性活躍推進室」を設置し、制度や研修体系、職場環境づくりを進めてきました。
大川私は、その2008年に入社し、首都圏ディーラー損害サービス部に配属されました。女性社員も多くの事案を処理していましたが、管理職はほとんどが男性でした。
伊達2008年は女性ライン長が出始め注目が集まっていた時期でした。私が初めてライン長になったのは2011年4月で、当社では自分を含め、女性のライン長は現在の約半数以下という状況でした。東日本大震災対応で会社中が大変な時期でしたが、マネジメントだけはしっかりやろうと思いました。尊敬する上司、こんな風になりたいと思う上司がやっていることを見たり話を聞いたりしましたが、一番助けてもらったのは、同じ部のライン長の皆さんでした。

代表取締役社長
新納 啓介
大川はい、とても貴重な経験でした。周りのメンバーからたくさんの刺激を受けました。
新納この制度で留学した地域型社員で、現在は海外駐在員として活躍している人もいますよね。時間はかかったけれど、キャリアを積んでもらえる会社になったなと、人事異動発令を見て本当にうれしく思いました。
意思決定の場に多様な考えや意見を入れていきたい
司会職場では年齢や性別にかかわらず認め合う環境づくりが必要です。第一線で働く社員の状況はいかがでしょうか。
岡本私は2012年に入社し、山形サービスセンター(以下「SC」)に配属となりました。当時のSCは、女性のチームリーダーは一人いるかいないか、といった状況でしたが、今は全チームに女性リーダーがいるSCもあり、SC運営の中核は女性社員であるといっても過言ではありません。入社当初に仕事を教えてくださった女性地域型社員の方が今年度から山形SCの所長になられたことも、嬉しいニュースでした。
新納さん、伊達さんは、上司として現場でどのようなことに気を付けていらっしゃいましたか。

執行役員
伊達 聖子
伊達横浜支店長時代、全員面談を行った際に、女性社員が自信なく不安そうにしている姿を度々目にし、かつての自分も同じ気持ちだったので、何か背中を押すようなことをしたいと思いました。
当社にはキャリア形成のためのトレーニーやポストチャレンジ等の制度があります。制度を知らない社員には上司が伝えて意識改革をすることが必要です。特に地域型社員は、ずっとこの地域で働くからこのままでいいかな、と思いがちなので、話を聞き自分の経験を伝えて、チャレンジを後押ししてあげることが大切かなと。
新納2018年度から2年間、北陸地域を担当しました。富山支店を中心に女性活躍を推進しており、2017度には「女性が輝く元気企業とやま賞」を受賞するなどの実績がありましたが、さらにドライブをかけようと、北陸全域の女性社員会議を主催し対話をしました。
知創造勉強会(注)北陸版では、再保険部長時代に交流のあったドイツ人講師を招聘しました。英語での質問にチャレンジする社員もおり、刺激になったと思います。
当社の行動指針である地域密着を進めるには、伊達さんの言うように、地域型社員が主役としてもっと活躍すべきです。全域型社員は2−3年での転勤が多い中、ずっとその地域にいて代理店やお客さまに寄り添うことができる地域型社員の皆さんが主役だよと伝えてきました。
伊達地域を守るのは地域型社員ですよね。代理店・お客さまとのつながりは、地域に根付いている地域型社員が一番強い。
新納その通りです。だから自信をもってやってもらいたいし、社長としてメッセージを発信していきたい。ずっとそこにいなくてはいけない、ではなく他地域で経験を積み戻ってきてさらに活躍するなど、柔軟に考えて人事制度も活用してもらいたいですね。
司会女性が意思決定層に入ることによってどのような変化があると思われますか。
岡本損害サービス部門では、女性のチームリーダーは多いですが、所長はまだ少ない状況です。お客さまの嗜好やニーズが多様化する中、サービス提供側も考え方の多様化を進めなければいけません。多様な人財が多様なマーケットやお客さまと向き合うことが新たな価値創造につながるのではないでしょうか。女性所長が増えることにより、その効果が期待できると思います。
実際、私は、女性役員の一蜷齧アと日々打ち合わせをしていますが、自分にない視点や考え方を得ることができ、部門全体の発展と成長を実感しています。
伊達女性に限らず多様な人財が活躍できることが重要です。チャレンジすることがいい会社につながっていくと思います。
新納多様な意見を会社に届ける、それを皆で確認して進める、というように、意思決定の場に多様な考えや意見を入れていけるようにしていきたいと思います。
見え方の変化や評価につながる=発信の大切さ
司会当社の取り組みは代理店や取引先からどのように評価されているでしょうか。
新納短期留学制度実現に向けて取引先に協力依頼をしたときや、知創造勉強会女性版に女性ブローカーを招聘したとき等に、女性活躍を支援している会社との評価をいただきました。また、あいおいニッセイ同和損保(以下「AD」)はすごいね、といわれることの1つがパラスポーツの支援です。2020東京パラリンピックで車いすバスケットボール決勝戦に当社社員が出場することを海外の取引先に伝えたら、みんながTVで観戦、応援してくれ、ADはそういうことをやる会社なんだね、という評価にもつながりました。発信することで外からの見え方が変わり評価につながるので、社長としてどんどん発信していきたい。社員一人ひとりが取引先や家族に発信していくことも大切です。そのことで皆が元気になり、エンゲージメントも上がっていくと思います。
チャレンジ精神をもって変化する/女性活躍もエンゲージメントも「当たり前」に
司会当社の目指す姿についてお聞かせください。

商品・CSV×DX企画部 課長補佐
大川 恵
大川私は2021年度に、MS&AD Ventures社で1年間研修を受けました。その時同僚との会話から考えたことは、「女性は特に周りと自分を比較しがちだけれどそもそも違って当たり前」ということです。他人との比較ではなく、単純に社会や組織にどう貢献できているか、という視点で考えることで、エンゲージメントが高く、自分に納得できる働き方ができるのではないでしょうか。Ventures社にいた多種多様な人たちを見て、本来のD&Iとはこれだ、と思いました。
今後、自分自身は在宅勤務等を活用して働き方を変えていきたいし、周りの方に対してはアンコンシャスバイアスを無くしていく意識を持つ等、昔ながらのやり方に固執しないことが必要と思います。
岡本まずやらなくてはいけないことは、デジタル技術の活用だと思います。効率化や生産性向上につながり、ワークライフバランスもよくなると考えるからです。損害サービス部門ではペーパーレスが進み、在宅勤務と出社で同じ環境を作ることができたので、柔軟に多様な働き方を推進していきたい。
チャレンジも大切です。新たなことには手を出しにくいけれど、まず一回使ってみて効率化や改革の意識を持たなくては。また、当社には良い制度がたくさんあるので、制度の理解浸透も必要と思います。
伊達DXに関して、現場も業務の効率化や生産性向上は必要と考えており、ペーパーレスやオンラインなどの非対面で代理店と対話する等努力をしています。本社は真に現場の状況を理解した上でDXを進めていかなければいけませんし、相手の立場に立って物事を考えることこそがD&Iなのではないかと思います。
司会DXが進めば、今後さらに仕事と育児や介護との両立ができる社員も増えていきますね。今、男性育休が注目されており、当社でも今年度まずは5日間の男性育休取得を推奨しています。

損害サービス業務部 課長補佐
岡本 有悟
岡本私の所属部署でも男性育休の取得者が増えています。実際に取得した先輩社員が、「家族も喜んでいたし、自分自身も心身ともにリフレッシュできた。皆も積極的に取ろう」と話していたことが印象に残っています。
取得推進には、上司からの声掛けだけでなく、役職員全員が制度について理解を深め、職場全体で取得へのハードルをなくしていくことが大切だと思います。そのことが職場コミュニケーション活性化や社員のエンゲージメント向上につながると思います。
司会最後に新納さんからメッセージをお願いします。
新納D&Iが当たり前にできている会社にしていきたい。いろいろな層がさまざまな場面で意思決定プロセスに入る、最前線で活躍することを目指しています。
エンゲージメントに関しては、「社員が自社を友人や家族に勧める、テレマティクスに代表されるCSV×DXを語れる状況」が当たり前になる環境を作りたい。そのことがエンゲージメントが最高レベルになった証となります。
グローバルもキーワード。リアルタイムで情報交換をしたり、人財交流も行う等、日本だけでなく世界中の最前線で活躍している仲間からヒントをもらいながら、グローバルベースでD&Iを語れる会社にしていきたいと考えます。
チャレンジ精神をもって変わっていくために社長として背中を押していくので、皆さん、一緒に「やろうぜ!!」
- (注)社員の知識習得等自己研鑚と成長のための講演会。業務の関連有無に関わらず幅広いテーマを選定し四半期ごとに実施。
- ※部署名は当時の名称を記載